近年丸亀でも新しい葬儀会館がどんどん建っていて、葬儀関連の施設の需要は高まっているように見えます。
その中でも、割合が高くなっているのが「家族葬」に関する会館です。
世のニーズとしては増えているのかもしれませんが・・・
正直、お坊さんとして感じることは「家族葬」はあまりオススメじゃないということをお伝えしたいと思っています。
といいますか、「家族葬」というネーミング自体もあんまり良くないなと思うわけです。
本記事は200件以上お葬式をつとめさせて頂いた経験から考える家族葬の話をお届けします。
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家族葬のメリット
家族葬を選ぶ方の多くはこのようなメリットを考えていることでしょう。
- 費用が安い。
- 近所の人との関わりが少なくて楽。
- 他の人へ連絡する手間が少ない。
- 香典のお返しなどの手間が少ない。
- 本当に近い関係の人だけでお別れできる。
人によっては「家族に迷惑をかけたくないから自分の葬儀は家族葬でいい」なんて言ってるのも耳にしますね。
そのぐらい家族葬というのはいろいろと煩わしくなくて、気持ちのこもったいいお葬式になりそうというイメージをもっている方が多いということなんでしょう。
しかしそんな家族葬にもデメリットはあるんですよ。
家族葬のデメリット
会場規模が小さくてすむので費用が安いということはありますが、家族葬にもデメリットはいろいろあります。
- お別れできなかった弔問客が後日バラバラなタイミングで家に訪れてくる。
- 家族外の親しい方へ案内しなかったことで関係性をこじらせる。
- 香典返しのタイミングがバラバラで余計手間がかかる。
通常、誰かが亡くなると、亡くなった日かその翌日に通夜を行います。(友引との関係で前後することがあります。)
そしてその通夜の翌日に葬儀というスケジュールになる地域が多いです。(東京など都市部は通夜までの期間がもっと長くなります。)
家族が亡くなったあとは短期間にいろいろなことを決めないといけないので、葬儀が終わったあとの事やデメリットまで考える余裕はないんですよね。
家族葬にしたことで起こったトラブル
ぼくが見聞きした中で、家族葬にしたことで起こったトラブル(プライバシー保護のため内容は多少改変しております。)を紹介しておきます。
親しい友人への案内をどうするか?
どちらもうちの檀家さんのAさんとBさんがおられました。
AさんとBさんは家も近所でとても仲の良いお付き合いをしておりましたが、だんだんお互い入院したり高齢のため施設に入ったりということもあって、直接連絡をとる機会が減っていたようです。
そんな折、Aさんが亡くなりました。
Aさんのお葬式はぼくが勤めますので、枕経をつとめたあと一緒に打ち合わせをしました。
すると、ご家族の方が「外部の方は誰も呼ばずにお葬式をあげます。」というのです。
ぼくは「BさんにAさんが亡くなったことを伝えた方がいいんじゃないですか?」
とお伝えしましたが、ご家族の方は
「家族葬で葬儀をするので伝えなくてもいい。」
というご意向でした。
あまり差し出がましいことをしてもいけないと思いその場はそれでおさめて、結局Bさんにはご案内せずにお葬式をつとめました。
そしてAさんの葬儀が終わって、しばらくたったころ。
Bさんのおうちにお参りに行くことがありました。
ご葬儀も終わって日もたっていましたし、Aさんが亡くなったことはBさんの耳にも噂レベルでは耳に入っていたようです。
BさんからAさんが亡くなったのかということを尋ねられたので、そのことを伝えると、
「なんで言ってくれんかったん?!お葬式も出席したかったのに!」
って。
う〜ん、そりゃそうなりますよねぇ・・・。
おふたりの仲を知っているものとしては「絶対そうなる」とは思ったのですが、遺族の方が葬儀の案内をしないというところを、ぼくが勝手にお伝えするわけにもいきませんでした。
のちのち経緯をお話させてもらって、結局Aさんの四十九日の法事の時にBさんをお招きして一緒にお別れの機会として法要をつとめることになりました。
このケースは納得してもらえたので大きなトラブルにはなりませんでしたが、生前仲良くしていた方に案内しなかったばかりに、
「仲良しだと思っていたのに、うちとはそういう付き合いだったのか!」
みたいな関係性をこじらせるパターンもあります。
表だって口にしなくても、モヤモヤがのこって疎遠になることもありますね。
お別れのタイミングを失った弔問客が後日たくさん訪ねてくる
もうひとつのパターンはお仕事などで社会的にかなり活動をされていたCさんが亡くなった時に家族葬にしてしまったパターン。
家族と本人は小さなお葬式をするつもりで生前から家族葬に決めていたようです。
しかし、葬儀の後。
Cさんが亡くなったことを聞きつけた多くの方が「Cさんにはお世話になったから」と自宅の方へお悔やみに訪ねてくるという事態に。
人が訪ねてくる期間がまばらになりますので、ご家族の方はあとあと応対するのが大変だったようです。
話を聞きつけて、後から訪ねてくる方のスケジュールを把握することは不可能です。
そうなると、お悔やみを頂いた方への香典返しのタイミングもバラバラになります。
一度に手配できたはずのものが、何回にもわけて手配することになりますのでそちらも余計手間がかかります。
お葬式を正式にご案内しておけばそのときにみんなでお別れすることができたのに、家族だけで葬儀を行ったために多くの方にモヤモヤがのこる結果となってしまいました。
社会的なつながりが多い方はこの点も考えておく必要があります。
家族葬って名前がややこしい?
根本的に、家族葬って名前が良くないんだと思うんですよ。
先ほども書きましたがほんわかしたイメージが先行した言葉で、実態とはズレがあります。
「家族葬で葬儀をやります。」と言われると、ちょっと遠い親戚とか友人は「家族ってどこまで?自分は参列してはいけないんだろうか・・・?」って困るという声も耳にします。
言葉の味気はなくなりますが、家族だけじゃなく一般にも案内する小さな葬儀をおこなう「小規模葬」とかがいいのかな?
というか名前は必要ないのかな?
ぼくが目や耳にする範囲においては家族だけで葬儀をつとめるよりも、外部にもきちんとご案内をしてお別れの機会を公式に設定する方がスッキリしたのにというパターンが多いような気がします。
お別れの場を設定するためにも親族以外の一般関係者にもきちんとご案内をして葬儀を行うことをオススメします。
家族葬まとめ
家族葬って親しい家族だけでお別れして、ほっこりしていいねみたいな言葉のイメージが先行しています。
ですが、実際のことを考えるとデメリットが多いことはおさえておいた方がいいですね。
何よりこの葬儀ということを通して今一度考えて欲しいことは人間は家族だけで生きているわけじゃないということ。
家族以外にも亡くなった方を大事に思っている方はたくさんおられるし、最後のお別れをきちんとしたいと思っている方もいます。
家庭によって親族間などの人間関係のトラブルをかかえていて、本当に家族だけでお葬式をした方がいい場合ももちろんあります。
しかしながら、お葬式は縁のあった方とお別れをして一区切りをつけるとともに、自分自身も限りある人生であることを再確認する大切な機会です。
お葬式が終わってから、「なんで案内してくれなかったんやっ!」とか「最後に顔を見たかった。」とか「弔電のひとつも送りたかったのに・・・」みたいなモヤモヤがのこると取り返すことができません。
誰しもいずれは命を終える身。
葬儀のあり方について考えるご参考にしてください。
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