残念ながら治療の甲斐なく家族が病院で亡くなってしまった時。
大切な家族との別れに、何をすればよいのかわからない方がほとんどではないでしょうか。
現代では8割以上の方が病院でなくなると言われていて、多くの方が最期の時を病院で迎えることになります。
つきつけられた現実に苦しい思いをされるかもしれませんが、遺族にはやらなければいけないことがあります。
本記事では病院で死亡が確認されてから遺体を搬送するまでにやるべき事や注意すべき事をまとめました。
タップできるもくじ
病院で家族が亡くなったあとの流れ
病院で家族が亡くなった時には以下のようなことを行います。
- 医師による死亡判定
- 末期の水(まつごのみず)
- 清拭(せいしき)
- 身繕い・死化粧
- 退院手続き・死亡診断書などの書類受け取り
- 遺体搬送
1.医師による死亡判定
医師の死亡診断によって、人が亡くなったことが確定されます。
この死亡判定をされた時点で「患者」ではなく「故人」となります。
医師によって死亡診断書が作成されますので退院手続きをするまでに受け取りましょう。
死亡診断書には5000円〜10000円ほどの作成料金がかかります。
この死亡診断書は死亡届とともに1枚の用紙になっており、死亡届を役所に提出することで火葬許可がおります。
死亡届と死亡診断書の用紙は葬儀後の手続きでも必要になるものがいくつかありますので何枚かコピーをとっておくことが必須です。
役所に原本を提出してしまうと、後の手続きで必要になったとき再発行する必要があります。(有料になります。)
2.末期(まつご)の水
臨終を告げられたあと、立ち会った方たちで末期の水をとるという儀式を行います。
この儀式は息を引き取った方の口元を水で潤すことで「死に水をとる」とも言われます。
お釈迦様が亡くなる間際に水を求めたということが由来になっていて、広く仏教式の葬儀をされる方はおこなう儀式です。
割り箸に脱脂綿を巻いた物、樒の葉、筆、綿棒などでお椀にいれた水をとり、故人の唇を湿らせます。
補足:浄土真宗と末期の水
正式に教義にのっとった作法ならば浄土真宗では末期の水を取るということはしません。
浄土真宗では亡くなった方は阿弥陀仏のはたらきですぐさま浄土という仏の世界に生まれ、諸仏の1人となられたというように受け止めます。
ですから厳密に言うならば、末期の水をとり故人が苦しまないようにと思う心は浄土に生まれる身であるという教えに対して疑いの心がある状態と言えるからです。
ただ、家族の「のどを潤してあげたい」といたわりたくなる気持ちを否定するものではありません。
浄土真宗の葬儀ということがわかっていても葬儀会館で用意されているケースも多いです。
ぼく個人の考えとしては、親しい人を亡くし混乱と無力感を感じている遺族にとって、気持ちに何か納得するものがあるのならばしてあげればよいのではないかと考えています。
末期の水は臨終後すぐ、もしくは遺体を自宅や葬儀会館に搬送したあと安置した場所でも行われることがあります。
3.清拭(せいしき)
看護師さんが清拭(せいしき)という故人の体を清潔に拭き清める処置を行ってくれます。
ご遺体の目を閉じさせて、あごを持ち上げて口をとじ、アルコールを含ませたガーゼなどで全身を拭いて清潔にしてくれます。
遺体を清めた後は口や鼻、耳、肛門などに脱脂綿を詰め体液が流れないようにする処置をします。
補足:湯灌について
湯灌という浴槽でお湯を使って体を清める方法はあまり病院ではなされません。
葬儀会館や自宅へ移動したあと葬儀社の方によって希望の場合は湯灌サービスを受けることになります。
4.身繕い・死化粧
清拭の処置が終わった後、衣服を整え身繕いをします。
浄土真宗の場合、死後すぐに極楽浄土にうまれると受け止めますので「死出の旅路につく」という概念がなく死装束は着せる必要はありません。(旅支度のような手甲や足袋はつけない。)
浴衣などに着替えさせることが多いですが、希望の衣服があればそれを着せてあげましょう。
闘病期間が長くなると頬がこけてしまい、遺族の記憶とは大分イメージの違う人相になってしまうこともあります。
その時は口に綿を含ませて頬をふっくらとさせ、男性ならひげそり、女性には化粧などを施し生前のイメージに近づけます。
病院によっては身繕いと死化粧をしないところもあります。
その場合は遺体を搬送した後、葬儀社の方にお願いすることになります。
5.退院手続き・書類の受け取り
遺体の処置が終わったら、死亡診断書を受け取ってから退院手続きをして病院への支払いをすませます。
お世話になった医師・看護師さんにお礼を言いたい方は病院でのすべての手続きが終わってからナースステーションなどに出向いて挨拶されるとよいでしょう。
特別にお世話になった方にはお葬式のあとで日をあらためてご挨拶に訪問するのも丁寧です。
6.遺体の搬送
遺体の処置が終わると病院から遺体を搬送します。
遺体の搬送は自分でおこなう場合もありますが、多くの場合葬祭業者にお願いすることになります。
病院と提携している葬儀社にそのままお願いするか、自分で葬儀社に依頼してきてもらうことになります。
ここで頭においておくべきことは、病院と提携している葬儀社が必ずしも良い業者とは限らないということです。
病院からの遺体搬送で知っておくべきことはこちらをご覧下さい。
遺体の処置の間に死亡の連絡をする
死亡診断書の作成や遺体の処置をしてもらっている間に30分〜1時間ほど時間がかかります。
その間に関係各所に死亡の連絡をします。
死亡の連絡をする時は、相手によって大きく3つに分けて考えます。
- 死亡直後に連絡すべき人
- 自宅や斎場に遺体を安置してから連絡すべき人
- 通夜やお葬式の日程が決まってから連絡するべき人
電話連絡をする頃には周囲の人もとても混乱しますので、連絡した相手のリストを残しておきましょう。
数人で手分けして連絡をした場合、誰に連絡をしたのか?また再度詳細を伝えるべき人は?など、混乱してすぐにわからなくなります。
きちんとリストに残すことで連絡ミスを防ぐことができます。
1.死亡直後に連絡する人
死亡直後に連絡すべき方は故人と距離・関係が深い方を中心に連絡をします。
- 危篤の連絡をしたけれども会えなかった方
- 危篤の時に駆けつけてくれたものの亡くなるより前に帰った方
- 故人の勤務先
- 所属寺院
この時点では通夜・葬儀の日程はまだ何も決まっていない状態です。
一報をいれ、出席していただく方へは再度詳細が決まり次第連絡をしてください。
故人の勤務先は上司の方、または総務あてに電話で連絡します。
所属寺院への連絡
所属寺院へもこの段階で一報入れておくのがよいでしょう。
臨終勤行を勤める予定も含め、通夜・葬儀の日程の打ち合わせなどがスムーズに進行しやすくなります。
- どこに遺体を搬送するのか?
- いつごろ搬送先に到着するのか?
この2点を伝えておきましょう。
もしうちのお寺に来て欲しいというご要望があればお問い合わせからご連絡、もしくは電話でお問い合わせください。
県外の場合、香川県からの交通費と宿泊費を担保していただけたら通夜・葬儀を勤めることも可能です。
2.自宅や斎場に遺体を安置してから連絡すべき人
遺体を安置したあと、お客さんを受け入れる準備ができてから連絡すべき人がこちらです。
町内会や自治会への連絡
町内会や自治会など葬儀にお手伝いをお願いする場合は、遺体を自宅に連れ帰ってから連絡した方がよいです。
あまり早くに連絡をすると、遺体の搬送が到着するより先に近所の人が集まってしまうことがあります。
家の中の準備ができないうちに近所の人が集まると収集がつかなくなりますので、自宅や会館に遺体の搬送が完了した段階で連絡されるとよいでしょう。
家族葬で葬儀を出すときは自治会などにはお知らせしない場合もありますが、何度も僧侶として葬儀を勤めさせていただいた経験上、家族葬はあまりおすすめしていません。
理由はこちらにまとめてありますのであわせてお読みください。
このころには喪主を決めるタイミングにもなります。
喪主の決め方についてはこちらの記事をごらんください。
3.通夜やお葬式の日程が決まってから連絡するべき人
友人知人など弔問客としてお招きする方には通夜・葬儀の場所と日程が決定してから連絡をしましょう。
どのくらいの人に連絡するかで、あとの式場の規模も考えなければなりません。
病院で家族が亡くなった時にやるべきことまとめ
大切な家族が亡くなった悲しみの中、その後の手続きや葬儀を勤めるための準備が待ったなしでスタートしてしまいます。
死後の手続きや応対は決定するまでの期限が短く、どんどん決めていかなければなりません。
バタバタと過ごすことで遺族の悲しみを忘れさせるというはたらきもありますが、納得のいくお別れの仕方ではなかったと後悔しても手遅れになります。
つらい気持ちでなかなか動けないかもしれませんが、気をしっかりともち最期のお別れの時間を悔いなくすごせるようにしてください。
またこのあと通夜・葬儀にあたって喪服・礼服などが必要になります。
お持ちでないなら礼服喪服スーツレンタルや礼服喪服レンタル110番などのレンタルサービスで早めに衣服の手配をしておくとスムーズです。