こんにちは、善照寺住職のへんも(@henmority)です。
ウクレレ奏者高橋重人さんとの対談記事のパート3をお届けいたします。
以前の記事を読んでいない方はこちらから先にお読み下さいね。
ウクレレ×仏教 高橋重人さんと対談したよパート3


はい、お願いします。

先ほどウクレレキイチさんに素晴らしい演奏を聞かせていただきましたね。
ウクレレというのはすごく綺麗な音色だということがわかっていただけたかと思います。

そうですね、本堂に響いてすごく心地良い音色でした。


僕もこの楽器を選んで良かったなぁと。
この音色が好きではじめたんですよね。

で、このウクレレは今はすごく現代的な形になっていて、ギターとすごく良く似た形をしています。

そうですね、小さいギターみたいな感じです。

でも最初はこんな形じゃなかったんですよ。

そうなんですか?

実はウクレレはポルトガルから船に乗ってハワイにきたギターの影響を受けているんです。
そこからギターの「形」が伝わったんですよ。

へぇ〜。

もともとハワイには伝統的な楽器がありまして、口にくわえてビヨーンと鳴らす「ウケケ」という楽器がありました。
頭蓋骨に音を共鳴させて鳴らす、いわゆる口琴(こうきん)ですね。

これは環太平洋の地域には同じような楽器があるんですよ。
北海道のアイヌだったらムックリといいますし、フィリピンにも同じようなものがあります。

そんなに違う地域に同じ楽器があるんですか?!

そうなんです。
木と弦でできていて…、まぁ昔だったので金属の弦だったのか動物の腸で作った弦だったのか…

彼らは海遊民族でしたからカヌーに乗っていろんな場所へ行くわけです。
その時に楽器として用いることもありましたけど、それだけじゃなかったんですよ。

どんな使い方があったんですか?

楽器の方が音が遠くまで飛びますから、その音を使って意思を伝達したんですね。

へぇ〜。

ですから、これは地上の話ですけれども雨がしとしと降って好きな人のところへ行けない時に「好きですよ〜♪びよ〜ん♪」みたいな使い方もしたようですね。

なるほど〜。

その楽器と西洋の合理的なギターの形が融合して弾きやすくなったわけです。
フレットという仕組みがついたので、決まったところを押さえると決まった音がでるようになったんですよ。

▼銀色の金属部分がフレット。このフレットが弦の支えになって音程を安定的にだせます。

もともとのウケケにはそういうものはありませんから、演奏は相当難しかったでしょうね。

バイオリンとかと同じで音感が必要ですね。

このように合理的に音がだしやすい西洋の楽器の形と、ハワイに住んでいる人達の魂をあわせたのがウクレレだと。
このように先生から教えてもらったんですよ。

ウクレレにはそんな歴史があったんですね、すごく勉強になりました。

そこで、このように新しい文化が出会って新しい物が生まれるときには、無くなってしまうものと残るものってのがあると思うんですよ。

そうですね。

演奏方法にしても同じで、私のウクレレの先生の先生から伝わった弾き方をそのまま受け継いでいこうとしているんですよ。
そのかつての響きが失われないように伝えられたらいいなと思っています。

すごいことだと思います。


仏教も海を越えて日本にきたわけですよね。
そのほかにも時代や言葉の違いもあって、仏教が伝わる中でも変わっていく部分もあると思うのですが、「変わらないところ」っていうのはどういうところでしょうか?

そうですね…。
やはり仏教のスタートは「なぜ人は生まれ、老いて病気になって死ぬのか?」ということですから、人間としていかに生きるのか?ということにフォーカスするということは変わりはありません。

その目指すべきところに向かう手段の違いや論理構造の違いが仏教の宗派の違いと思ってもらったらわかりやすいかもしれませんね。

なるほど。

では仏教を勉強すると人生の意味を考えるのに役に立つと考えたらよろしいのでしょうか?

そうですね…意味を考えるというよりは自分の姿がはっきりしていく、知らされていくということでしょうか。

それはどういうことでしょう?

物事というのは自分の方向からしか見えないわけですよね。

この世の中で生活しているとすべての物事に「これは良いこと」「これは悪いこと」って線引きをしながら生きていくんですよ。

そうですね。

この善悪の判断をしている基準は何なのか??というとそれは100%自分の都合なんですよね。

ほう。

仏教を学ぶ中で自分勝手な線引きをしている自分なんだということが知らされたときに物事の評価基準が変わってくるわけです。
物事の善悪の判断基準が変わるわけです。
こういうところに仏教を学んでいく意味があると思います。

なるほど。

例えば今日コンサートをこのように開催しておりますが、もし雨がすごい降っていたら

こんな日に雨降りやがって!!

って思いますよね。

そうですね。

でもカラッカラの水不足で困ってるって時だったら、いくらコンサートあるからって言っても

今日は恵みの雨や〜!雨が降ってくれて良かった〜!

ってなると思うんですよ。

いや〜たしかにそうですね(笑

物事の状況は一緒なのに、完全に自分の都合でしかものを言ってないわけですよね。
こういうことが知らされた時に「自分勝手な生き方をしよるなぁ」気づかされるわけです。
そこに教えに触れていくことの意味があると思いますね。

いや〜よくわかりました。


このご本尊の阿弥陀如来っていうのは光の仏様と言われるんですよ。
この光というのは何かというと智慧をあらわすわけです。

この智慧というのは物事をはっきりと見えるようにするというはたらきがあるわけです。
ですから、お参りして「何かようわからんけど良かったなぁ〜」ということだけではなくて、このような対談を通して何か物事の見え方が変わる学びがあったということになれば嬉しいことでございます。

いや〜大変勉強になりありがとうございました。
普段あんまりそういうことを考えないまま生きていると感じましたね。

まぁ普段はあんまり考えないもんだと思いますよ(笑
だから、時々お寺にきて話を聞いてもらえたらいいなと(笑

そのために、このようにイベントを開催しているわけですね?

そうですね。
小難しくなく、楽しく学んでいける環境を作りたいなと思っています。

こんな素敵な演奏会を開催して、機会と素敵な場所を提供して頂きましてありがとうございます。

こちらこそ、ありがとうございます。

では、この浄土の素敵な表現の一部となれるような、そんな時間を皆さんと一緒に過ごせたらと思います。

そうですね、ではお時間も参りましたので演奏をよろしくお願い致します。
ー対談終了ー
ウクレレ×仏教 高橋重人さんの演奏
演奏会の動画はないので高橋重人さんの映像をひとつご紹介しておきます。
このヒロマーチも弾いて頂けました。
▼この右手はどうなっているんだ…。とてもひとつの楽器の音圧と思えない。
ライブでは日本の曲からラテン、アヴェマリア、ブラジルの曲と多種多様な曲をウクレレ1本で表現してくださいました。
アンコールでは、高橋重人×ウクレレキイチ×住職ということで即興コラボレーション。
▼お2人の弾く「12番街のラグ」にあわせてフットバッグのパフォーマンスを。

ウクレレ×仏教 まとめ
高橋重人さん、ウクレレキイチさんおふたりのおかげで、非常に有意義で素敵な演奏会となりました。
ただのコンサートだけでなく、仏教の教えを伝える場所としての意義が果たせたように思えます。
▼また次回も開催しようね! ということですのでお楽しみに。……とっしゃんまた半目になってる。なぜか集合写真にまともに写れない(笑

(撮影協力:ヨスさん)
では、いろいろと仏教の話を聞かせて頂いたので、次はウクレレの話をさせていただきましょうか。