お坊さんの仕事といって1番最初に思い浮かぶのは「葬儀」だと思います。
みんなの前でお経を読んでいる姿が一番に思い起こされると思いますが、お葬式に関わる仕事はそれだけじゃないんですよ。
今日はお坊さんが葬儀にあたって準備していることの一部をお見せしようかと思います。
お坊さんが葬儀の前に準備していること
葬儀に当たって、お坊さんは位牌に故人の「法名(浄土真宗では戒名とはいいません。これについてはまた別の機会に。)」と「修多羅文」という文を書きます。
「修多羅(しゅたら)」って普段耳にする言葉ではないのでよくわかりませんよね。
▼修多羅というのは、「お経」と同じ意味の言葉です。
サンスクリット語で織物の「たて糸」という意味の「スートラ」という言葉がもとになっていて、中国でその言葉の音をたよりに「修多羅(しゅたら)」という漢字があてられました。
「スートラ」という言葉の音をとって翻訳すれば「修多羅」 「スートラ」という言葉の意味をとって漢字になおすと「経」という字が当てられました。
修多羅=スートラ=お経であり、どの言葉も意味は「たて糸」ということです。
地球上で位置を表すのに「緯度」「経度」という指標をつかいますよね。
「緯」度というのは赤道に対して平行に、東西方向に線を結んだ指標で「よこ」方向の線です。
それに対して「経」度というのは赤道に対して垂直に南北方向に線を結んだ「たて」方向の指標です。
「経」という字が「たて」の意味で使われている例です。
「お経」が「たて糸」ってどういう意味?
織物を例にとるとわかりやすいかもしれません。
通常織物は「たて糸」を先にはって、それを基準にして横糸を通していきます。
人生をひとつの織物として考えますと、お釈迦さまの説かれた教え・お経が「たて糸」に、我々の日々生きていること、毎日の生活が「よこ糸」といえるでしょう。
ちゃんとした指針となる「たて糸」をもっていないと、「よこ糸」は支えられず織物になりません。
お釈迦さまの説かれた教えをまとめたものを「お経」と呼ぶのは、そういう人生を支える大事な「たて糸」となる教えなんだ、ということでしょう。
修多羅文には何が書かれているの?
修多羅文の中には仏説無量寿経の中の文言を書いています。
其佛本願力 聞名欲往生 皆悉到彼国 自致不退転 (その仏の本願力、名を聞きて往生せんと欲へば、みなことごとくかの国に到りて、おのづから不退転に至る)
南無阿弥陀仏 法名〇〇
葬儀が終わると棺の中に一緒に納めてそのまま火葬します。
ご遺族の方はじめ誰の目に触れることもなく燃えてしまいますが、毎回大事な「たて糸」となる教えを頂いているんだという気持ちで、できるだけ丁寧に書いて納めさせて頂いております。